年間の内視鏡検査数が約20,000件にのぼるハイボリュームセンターである慶應義塾大学病院
内視鏡センター、予防医療センター、救急科と複数の部門で、2007年から内視鏡検査業務の部門システムであるSolemio ENDOを使用し、2021年1月からは新バージョンであるSolemio QUEVを採用しています。今回、慶應義塾大学病院でのSolemio QUEVの使用状況や使用した際のメリットなどについて、医師・看護師・システム部のそれぞれの観点からお話しいただきました。
慶應義塾大学病院 システム間連携イメージ
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Solemio QUEV活用による医療安全や経営面へのメリット
内視鏡センター 准教授・副センター長 細江 直樹 先生
Solemio QUEVの日常診療や
研究活動での活用やメリット
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内視鏡センター(以下、当センター)では、5人の専任医師のほか延べ100名を超す医師の協力体制のもと、年間多くの内視鏡検査を実施しており、当センターを含む複数の部門で、内視鏡検査業務には内視鏡検査業務の部門システムであるSolemio QUEV(以下、QUEV)を使用しています。QUEVにはテンプレート機能や過去データのコピー機能といった、レポート入力に有用な機能が多く搭載されています。私が日常業務で使用している中でとくに有用と感じた機能は、任意で入力必須とするレポート項目の設定ができる必須入力項目設定機能です。この機能を活用し、実施医から主治医に対して重要事項の伝達漏れがないように運用しています。
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また、毎月QUEVのカンファレンスモードのレポートステータスの簡易検索機能を使用して中間レポートのままであるものをピックアップし、実施医が病理検査の結果を確認していない検査を発見するようにしています。このカンファレンスモードでの中間レポートのピックアップは、QUEVで追加されたレポートステータスの簡易検索機能によってさらに容易になっており、業務効率化につながりました。これらによって、近年話題となっている検査情報の未読問題・重要事項の伝達漏れ問題の解決にあたって、電子カルテのアラート機能に加えQUEVの機能を活用しダブルチェックの体制が構築できました。また、QUEVはレポート入力機能だけではなく論文執筆といった学術的観点からも有用な機能があります。とくにキーワード検索機能では疾患名や臓器名などで検索をかけることで、特定の条件に当てはまる症例を容易にピックアップでき、データ収集の効率化につながりました。
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経営面におけるSolemio QUEVのメリット
QUEVは、病院経営の観点からもメリットを感じています。以前は検査部位のレポートへの記載漏れがあり、付随する病理検査の診療報酬の算定漏れが発生していたことがありましたが、前述したレポート入力の必須入力項目に検査部位を設定したことによって、病理検査の算定漏れが減少しました。これにより、当センターだけではなく当院全体に対しQUEVはメリットをもたらしていると考えています。
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Solemio QUEVの展望や期待
QUEVを使用して、日常診療における必須項目設定による伝達漏れ防止や学術的活動における症例データ抽出の簡易化、さらには診療報酬の算定漏れ防止といった多くの面からメリットを感じています。
当院はAIホスピタルモデル病院として認定されているため、今後は内視鏡検査についても患者さんのスマートフォンにデータを渡す機会が出てくると考えられます。その際、QUEVのデータを活用し表示する項目や画面レイアウトを自在にカスタマイズできれば、患者さんに必要な情報だけをピックアップし提供することも可能となると考えられます。また、タブレットでのタッチ操作や音声入力のように、画面スクロールや移動などが直感的に操作できるようになるとさらに使いやすくなると思われます
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Solemio QUEVによる日々のレポート入力効率化と
データの二次利用
予防医療センター 准教授 井上 詠 先生
日常診療の効率化に役立つSolemio QUEV
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予防医療センター(以下、当センター)では主に人間ドックの内視鏡検査を実施しています。内視鏡検査情報を管理しているQUEVには多くの有用なレポート入力機能が備わっていますが、とくに過去のレポートのコピー機能が有用であると感じています。というのも、検査のほとんどが検診目的であり、年に1回程度の来院頻度の患者さんが大半であるためです。そのような患者さんの多くは前回検査からの変化が少なく定型的な記載で差し支えないため、過去のレポートがコピーできることでレポート入力が簡略化でき、効率的になりました。所見名や腫瘍の肉眼型、 JED(Japan Endoscopy Database)に必要な項目など、ほとんどの項目がコピーできるため、とくに検査件数が多いときには助かっています。 加えて、レポート入力の際の画像表示において、参考にしたい過去のレポート添付画像が一覧で表示できるようになったことで、以前の検査との所見の比較も容易となりました。とくに腫瘍の位置など、テキストでは分かりづらい場合も画像を簡単に比較できるようになったことで、診断精度向上にもつながっているのではないかと感じました。
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過去の検査情報がワンクリックで簡単に一覧表示される「ドックツリー機能」も便利な機能の一つと感じています。過去の病変画像、所見、実施情報、検査歴など、ほとんどのデータを展開でき、確認が容易となっています。Solemio ENDO(以下、ENDO)のときにはオーダ詳細画面や検査歴の各画面に遷移しなければならなかったものが、QUEVではワンクリックで選択できるようになり、確認作業の負荷が軽減しました。
また、当センターのQUEVでは病理検査結果のステータスが検査一覧画面に表示されるように設定されています。この設定によって何度も院内システム間を移動して病理検査結果が出たかどうかを確認しにいく必要がなくなり、ステータスの表示に従って結果を確認すればよいようになったのは便利だと感じています。
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月報・年報の検索、出力機能の向上
任意のピンポイントな条件抽出が容易にできるようになりました。また、月報・年報機能は特定の条件を定めて月次・年次データを作成することができ、当センターの毎月の検査数の集計など、カンファレンスで用いるデータの作成に役立っています。現在、当センターで集計してはいないのですが、検査のリピート率なども算出でき、経営的な検討にも役立てることができるのではないかと思われます。
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Solemio QUEVの今後の展望や期待
QUEVでは過去のレポートのコピー機能によりレポート入力が大きく効率化されました。日々の検査業務の手間が減少したことにより、今後は検査数を増加させることができる可能性もあります。また、ドックツリー機能により過去データの参照が簡便となったことで、検査前の注意点のインプットや検査後の病変の見逃し防止にも役立っていると感じました。これらはすべて、最終的に患者さんのメリットにもつながってくるでしょう。
QUEVは従来システムのENDOよりも機能向上が図られており、より詳細な条件を設定しながらよりスムーズかつ効率的に運用することが可能となったと感じます。内視鏡検査のレポーティングシステムとしてはQUEV一つで完結していると思うほどです。しかしながら、検索機能などは詳細すぎるとも感じ、使いこなすにはある程度の習熟が必要とも思われ、より簡便なユーザーインターフェースへの発展を期待しています。
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Solemio QUEVでのリアルタイム確認による
看護業務の質の向上
看護部 梶山 安希子 様
看護師による内視鏡検査室での
Solemio QUEVの管理運用および使用のメリット
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内視鏡センターの看護師が行う内視鏡検査業務には、患者さんの介助、医師のサポート、検査器具の準備・片付けなどがあります。看護師は主に、検査の準備状況の確認、検査の実施状況の確認、リカバリールームまでの経過確認、使用した検査器具や手技加算の記録にQUEVを使用しています。とくに有用だと感じる機能は各検査室の状況一覧が表示される機能です。当院ではこの機能を活用しナースステーションに設置している大型モニターに各検査室の検査状況を表示し、進捗確認する運用を行っています。また、患者さんの予約時間や検査室への到着状況、検査項目や検査理由などはナースステーションや検査室に配置している端末で参照しています。これにより内視鏡検査の進行管理が容易となり、検査室内のみならず検査室外からでも看護師として担う検査業務のスムーズなフォローが行いやすくなりました。リアルタイムの状況把握に加え、過去データへのアクセスも容易になったため、検査前の情報共有による医師との連携も行いやすくなったと感じます。
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また、当院ではQUEV導入後に医事・会計システムとも連動させたため、検査終了後から会計までの業務も効率化されました。以前は直接電子カルテに検査で発生したコストを入力し、それを事務部門が医事・会計システムに転記していましたが、QUEVから医事・会計システムに情報が連携されるようになりました。患者さんは検査後に必ず会計を行うため、検査から会計までのフローがスムーズになったことは患者さんのメリットにもつながっていると思います。このシステム連動は事務部門からも好評で、看護師も検査後はよりストレスが少なく業務が進むようになりました。
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看護シートの作成・使用による看護業務の効率化
QUEV移行の際、検査前の状態から検査室、リカバリーまでの患者情報を記録できる看護シートをQUEVから出力できるようにしました。看護シートをそのまま電子カルテに取り込むようにメーカーからのフォローを受けながらQUEVと電子カルテ間の連動によるフォーマット変更を行い、データ共有が可能となりました。その結果、看護記録の記載も容易となり、業務の効率化につながるとともに医師との情報共有も行いやすくなりました。
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Solemio QUEVの今後の展望や期待
QUEVはリアルタイムの状況確認が容易になった点がとくに有用であり、看護師間のみならず医師との連携もとりやすくなりました。また、過去データの確認や情報共有も容易となりました。簡便なユーザーインターフェースへの発展を期待しています。
さらなる機能向上への期待としては、実際に検査で使用した鎮静剤の量やそのとき患者さんが感じている苦痛レベルなど、より詳細な患者情報の項目が設定できるとよいと思います。とくに、申し送り事項の記入欄がほしいと感じています。このような具体的な現場の情報を医師と共有できれば、さらにスムーズで安全な内視鏡検査ができ、患者さんの負担軽減につながると考えています。
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Solemio QUEVと院内システム連動による業務効率化へ
病院情報システム部 西沢 敏之 様
看護師 杉原 弘容 様
病院情報システム部におけるSolemio QUEVの運用や院内対応
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病院情報システム部(以下、システム部)では診療に必要なさまざまなシステムの運用や院内各部署の利用者からの問い合わせ対応、新規システムの導入などを行っています。ENDOからQUEVへの移行の際、システム部では既存の各種院内システムとQUEVの連携の調整をしました。院内には電子カルテや薬剤管理システム、物流管理システム、会計システムといった多くのシステムがありますが、それらシステム間での連携がない場合には、各システムで入力作業が必要となってしまいます。しかし、一つのシステム内の入力情報が自動的に関連したシステムに連携されるようになれば、かなり業務効率が上がります。
当院で行ったデータ連携でとくに大きなメリットを感じたのは、 QUEVと会計のシステムを連動させたことです。以前は看護師が薬剤や機器の使用といった診療報酬に関連した情報を電子カルテに直接入力し、それを事務スタッフが医事・会計システムに転記していました。 -
今回の移行では、QUEVに入力した情報が自動的に電子カルテ、医事・会計システムまで連携されるように変更したことで、使用した器材や手技加算の情報が医事・会計システムに反映されるまでの業務フローが効率化されました。当初、検査業務システムの実施入力フローは手術部門、手術内視鏡部門、アンギオ部門といったそれぞれの現場で完結したフローだったためそれを崩さないためにも連携しない予定でしたが、業務効率化のた め、まずは院内システムとの実施情報および会計情報連携を実装しました。この連携は当院で稼働している病院情報システムにあわせて構築されたものになります。
日常業務でのQUEVの使用についてはシステム部への質問はそこまで多くなく、直接現場からサポートセンターに問い合わせされている場合がほとんどです。その際にメーカーからはさまざまなフォローをもらっていて、大きなトラブルは起きずに運用できています。
Solemio QUEVの今後の展望や期待
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QUEVへの移行作業は、オリンパスからの多くのフォローによって、大きなトラブルもなく進めることができ、現在もサポートを受けながら滞りなくQUEVを活用できています。通常、導入・移行のプロジェクトが終了するとメーカーの担当者が離れてしまう場合もありますが、使用している中での問題発生などもあるため、今後もメーカーとして引き続きフォローいただけることを期待しています。
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今後のQUEVに期待するものの一つが、近年、全国の施設で議題にあげられている検査情報の未読問題への対応です。これを解決するため、未読の場合はアラートが出るといった機能が追加されるとさらに有用となると思います。このような重要な課題の解決に寄与する機能については、標準のパッケージとして組み込まれているとよいと思われます。
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